信州の高原大学の学生椿普一は、姉の彰子からの仕送りで勉強しているが、その姉が亡父の友人倉賀の秘書になったといって三万円の金を送ってきた。亡父の法事で上京した普一の眼は、姉の贅沢な暮らし向きに戸惑った。幼い頃よく一緒に遊んだ倉賀の娘八千代が、普一に二人きりで話したいというのも、何かいわくありそうだ。高
信州の高原大学の学生椿普一は、姉の彰子からの仕送りで勉強しているが、その姉が亡父の友人倉賀の秘書になったといって三万円の金を送ってきた。亡父の法事で上京した普一の眼は、姉の贅沢な暮らし向きに戸惑った。幼い頃よく一緒に遊んだ倉賀の娘八千代が、普一に二人きりで話したいというのも、何かいわくありそうだ。高原の寮に帰ってからも暗い疑惑の影が、普一の心をかきむしった。普一の親友庄司は林檎畑で知り合った娘菊江を愛している。そして、菊江が借金のため芸者に売られるという話を聞くと、学生らしい一途でその金をつくろうとした。そうした庄司の姿を、普一は美しいと思った。だが、庄司がアルバイトで稼いだ金は、普一のカンパを加えても借金の十分の一にも足りなかった。学期試験が終ると、庄司はもっと働かなければと、兄のいる大阪へ発った。普一は西洋史の雄島先生と上高地へ出かけた。ホテルに...
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